三洋電機ワイルドナイツ霜村誠一 その3 <トップアスリートの突き抜けた瞬間!>

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◇花園(全国大会)の洗礼
“花園”それは高校生ラガーマンの聖地である。
霜村は高校2年生でその大舞台に立った。ただ「正直、緊張し過ぎて、気持ちが悪くなって、ほとんど憶えていないんです。自分が花園のグラウンドに立っている、それ以外、何も考えられませんでした……」
 怪我人が出たため正規ポジションのセンターではなく、ウイングとして2回戦から出場していた霜村。普段なら身体の苦痛など忘れるはずなのに、花園では「気持ちが悪い」という思いだけがあった。
タックルした記憶もなければ、他のプレーのことも憶えていない。大会期間を通し緊張のあまり最低のパフォーマンスだったはずだと振り返る。
相手との闘いよりも、経験の無さによる目に見えない、自分が作りだしたものとの闘いに終始していたようだ。そして何も出来ないうちに花園は走り去って行った。
東京農大二高は、準々決勝まで勝ち進んだが、奈良県の天理高校と対戦し「21-23」の2点差に泣いた。けれど、霜村は負けたことよりも、自分が何もしていなかったような気がしたことによる、質の異なる悔しさを感じたのである。
◇突き抜けた瞬間!
「緊張のあまり自分のプレーが出来なかったことなんて、高校2年の花園以来ありません。気持ちに余裕がなければ、その瞬間に自分が何をするべきか考えられなくなりますし、本来のパフォーマンスが出せなくなることを知りました。また敵は相手ではなく、自分の中にあるんだということも実感しました。いま思えば高校2年の花園では大切なことを教わりました」
 私生活の充実はラグビーに繋がる。
「身の回りのことすらできない人間に、良いパフォーマンスができるはずがない」と、花園から戻った霜村は、ハードな練習はもとより、私生活から自分を律することによってラグビーのパフォーマンスを高めようと心掛けた。
 地味だが、小さな積み重ねが大舞台に生きると信じて日々を過ごした。
 そして翌年、再び聖地“花園”に立った霜村には「確かな自分」があった。
「前年あれほど緊張したのに、あれ?こんなものだったかなって……。選手にとって経験を積むことって大きいですよ。同じグラウンドに立っているのに、不思議なほど気持ちが落ち着いているなと感じたのです。その瞬間ですよ、僕が突き抜けたのは。あの心の余裕は成長の表れです。それが試合中における思考ですとか視野の広さ、パフォーマンスに表れました。チームというよりも個人的には、かなり突き抜けましたね(笑!)」
「東京農大二高20-27東海大仰星」霜村の“花園”はベスト16で幕を閉じた。
同期には東芝ブレイブルーパスの吉田大樹選手、クボタスピアーズの荻原要選手がいる。
【続く】